
用途地域・地盤・アクセス…見落としがちなチェックポイントを解説
「土地は広ければいい」「価格が安ければ十分」
そんな理由で工場用地を決めてしまうと、設計や稼働開始後に致命的な問題が発生する可能性があります。
工場は単なる“建物”ではなく、**生産活動の基盤となる「事業拠点」**です。
そのため、立地条件や法規制、インフラの整備状況まで総合的に検討することが不可欠です。
この記事では、工場用地を初めて選定する法人担当者向けに、失敗しないために必ず押さえておきたい5つの基準を、実務経験に基づいて解説します。
✅ 1. 用途地域:そもそも工場が建てられる土地か?
最初に確認すべきは、その土地に工場を建てられるかどうかです。
日本では都市計画法に基づき、「用途地域」が定められており、工場が建てられる地域と、建てられない地域があります。
用途地域 | 工場建設の可否 |
---|---|
工業地域 | ◎ 制限なく建設可能 |
準工業地域 | ◎ 一般的な製造業であれば建設可能 |
無指定地域 | ○ 地方では可能なケースあり(自治体判断) |
第一種住居地域など | ✕ 原則不可。確認申請が通らない可能性大 |
📌 工場用地として売られている土地でも、事務所や倉庫向けで、工場がNGのケースもあるため、必ず自治体や設計士に確認を。
✅ 2. 地盤・地質:補強工事が必要になる可能性は?
土地の購入価格が安くても、地盤が弱ければ数千万円規模の追加費用(地盤改良・杭工事)が発生することがあります。
▷ 確認すべき地盤項目
過去に埋立地だった場所か(旧河川・湿地など)
ボーリング調査結果の有無
液状化のリスク地域ではないか
👉 特に重量機械を使う工場では、高い耐荷重性が求められるため、地盤調査費用を予算に含め、購入前に仮調査を依頼するのが理想です。
✅ 3. アクセスと周辺道路:物流効率に直結
工場は製品・部品・資材の搬出入が頻繁に行われるため、敷地内だけでなく「周辺道路の幅・交通量」まで確認することが重要です。
チェックポイント | 内容 |
---|---|
接道幅 | 4m以上(大型車両出入りには6m以上が望ましい) |
高速道路ICからの距離 | 5〜10km以内が理想 |
大型車の通行制限 | 学校・病院が近くにあると制限されるケースも |
👉 アクセスが悪いと運送コストの増大・ドライバー確保の難化・納品遅延など、稼働後の実務に大きな影響を与えます。
✅ 4. インフラ整備状況(水道・電気・排水)
工場では、一般住宅よりはるかに多くの電力・水・排水設備が必要になります。
しかし、郊外や山間部の土地では、そもそも引き込みがされていないケースもあるため、事前確認が不可欠です。
インフラ | 確認内容 |
---|---|
電気 | 高圧受電(キュービクル)に対応可能か? |
上水道 | 配管径、引込可能容量(特に洗浄・冷却用途で大容量必要) |
下水道 | 排水処理場までの距離、油水分離槽の設置義務 |
通信 | 光回線の利用可否(IoT・監視カメラ用途含む) |
👉 インフラ整備に数百万〜数千万円かかることもあるため、「土地代だけ」で判断しないことが鉄則です。
✅ 5. 周辺環境・将来性:操業リスクや拡張性に関わる
工場は中長期的に操業する前提で選ばれるため、目先の条件だけでなく“未来のリスク”も含めた視点が必要です。
項目 | チェックポイント |
---|---|
近隣住民 | 騒音・振動・排気の苦情リスク(準工業地域では特に注意) |
自然災害 | 洪水・地震・液状化・土砂災害ハザードマップ確認 |
拡張性 | 将来的に建物や駐車場を増設できるか |
周辺開発 | 商業施設・住宅地が近づくと規制が強まる可能性も |
👉 特に「事務所併設型工場」「二期開発を見据えた計画」をする企業ほど、周辺環境の将来性まで考慮すべきです。
工場用地選びは「立地 × 法令 × 運用」をセットで判断
工場用地選びは、単に「広さ」や「価格」で決めるものではありません。
以下の5つの視点から、建設後の運用までを見据えて選定することが、失敗しないための第一歩です。
✅ 工場用地選びの5つのチェック基準
用途地域:建築可能かどうかの法的条件を確認
地盤条件:追加コストの発生リスクを見極める
アクセス性:物流・通勤・納品の効率性を確保
インフラ状況:水・電気・排水の供給体制を事前確認
周辺環境と将来性:操業トラブルや拡張余地を考慮する