
設計で気をつける5つの重要ポイント
化粧品は人の肌に直接触れる製品であり、安全性と品質への要求が非常に高い分野です。
そのため、製造現場となる化粧品工場では、**GMP(Good Manufacturing Practice/適正製造規範)**に基づいた管理体制と、それを支える施設・設備設計が不可欠です。
本記事では、化粧品GMPの基本概念と、設計時に特に注意すべき5つのポイントをわかりやすく解説します。
これから新設・改修を計画する方、GMP対応の見直しを考える方にも役立つ内容です。
✅ 化粧品GMPとは?
GMPとは、「適正な製造管理と品質管理によって、安全で安定した製品を製造するための基準」です。
化粧品分野では、**ISO 22716(化粧品GMP国際規格)**がそのベースとなっています。
◾️ GMPが求められる背景
製品の品質ばらつき・異物混入などを防止
製造工程の記録管理・トレーサビリティの確保
海外輸出やOEM製造時の信頼担保にもなる
👉 GMPは“何を作るか”だけでなく、“どのように作るか”を規定するルールです。
✅ 設計で気をつけたい5つのポイント
GMP対応工場を設計する際は、構造・動線・衛生性において明確な設計基準が求められます。
以下の5点は、化粧品工場で特に重要とされるポイントです。
① 人と物の動線を分離する
作業者と製品・原料の移動ルートを分離し、交差汚染を防ぐ設計がGMPの基本です。
設計例 | 内容 |
---|---|
人の動線 | 更衣室 → 手洗い → エアシャワー → 作業室(ワンウェイ動線) |
物の動線 | 原材料搬入 → 調合 → 充填 → 包装 → 製品出荷(工程順に一方向) |
👉 作業者と資材が同じ入口から出入りしないよう**「人用・物用の専用動線」**を設けることが重要です。
② ゾーニングの明確化
工程ごとの清浄度レベルに応じて、**エリアを区画分け(ゾーニング)**し、それぞれに適した環境を整備します。
ゾーン例 | 管理内容 |
---|---|
調合エリア | 防塵・防湿、温度管理、エアシャワー設置 |
充填エリア | クリーンブース・陽圧管理 |
包装エリア | 通常清掃対応レベル、物理的隔離を推奨 |
👉 ゾーンごとに**「気圧差」「清掃頻度」「作業服の区分」**も設けると効果的です。
③ 清掃性・メンテナンス性の確保
日々の清掃・点検がしやすい設計にすることで、異物混入や微生物汚染リスクを低減できます。
部位 | 推奨仕様 |
---|---|
床 | 継ぎ目なし、耐薬品性のある樹脂モルタル仕上げ、適度な傾斜と排水あり |
壁・天井 | 凹凸のないパネル仕上げ、目地レス構造 |
設備 | 壁から10〜15cm浮かせて設置 → 床掃除がしやすい |
👉 配管や排水もメンテナンス用の点検口付き設計が望ましいです。
④ 空調・換気と気圧差の管理
外部からのホコリや虫の侵入、区域間の空気混入を防ぐため、気圧差による空気の流れの制御が不可欠です。
清潔区域は**正圧(空気を押し出す)**に保ち、他ゾーンからの流入を防止
HEPAフィルターを通した清浄空気供給と定期換気
調合・充填などは湿度・温度の安定管理も必要
⑤ トレーサビリティと記録のしやすさ
GMPでは「いつ・どこで・誰が・どのように製造したか」を記録し、製品の追跡が可能であることが求められます。
製造エリアごとに作業記録の記入台・電子パネルなどを設置
原料や製品のロット管理エリアを設計に含める
配線・配管も目視点検できるようルートを明示化
👉 設計段階から運用イメージを取り入れることが、スムーズなGMP運用につながります。
GMP準拠の工場は“設計から差がつく”
化粧品工場をGMP対応にするには、単に清潔にするだけでは不十分です。
「交差汚染を防ぐ構造」や「記録しやすい動線」などを、建築段階から設計に取り入れることがGMPの本質です。
動線とゾーニングの分離設計が最優先
清掃性・空気管理・温湿度管理も要検討
GMPを理解する設計パートナーとの連携が成功のカギ