
工場建設は多くの関係者が関わり、設計・施工・申請・設備導入などが並行して進む複雑なプロジェクトです。
このようなプロジェクトで避けたいのが「手戻り」。
一度進んだ工程がやり直しになれば、コスト増・工期遅延・信頼損失につながりかねません。
本記事では、工場建設でよく見られる手戻りの実例と、それを未然に防ぐための具体的な対策を、コンストラクションマネジメントの視点からご紹介します。
よくある手戻りの事例5選
1. 建築確認後の設計変更
「確認申請が通ったあとに社内の要望が変わった」「設備メーカーとの打合せ後に仕様が変わった」などの理由で、設計図をやり直すケースは非常に多く見られます。
🔧 再申請・図面修正・構造変更などが必要となり、時間と費用が大幅に増加します。
2. 設備搬入時の寸法トラブル
生産機器のサイズや搬入経路の寸法が、現場で合わなかったというトラブルも代表的な手戻り要因です。
🔧 これは、設計段階で設備詳細が確定していなかったり、施工と設備担当間の連携不足が原因です。
3. 用地調査不足による地盤対応
地盤調査を簡易的に済ませてしまい、基礎工事開始後に支持層が想定と異なることが判明。追加杭工事や改良工事が発生し、設計変更・工程変更を余儀なくされるケースもあります。
4. 各種申請・許認可に関する認識不足
工業地域外の土地や市街化調整区域などでの建設では、開発許可や農地転用などの法的手続きが必要です。これを見落としていた場合、申請手続きで数ヶ月の遅延が発生します。
5. 現場での施工ミス
設計と施工図の不整合や、施工業者の図面読み違いにより、柱位置や配管ルートが設計と異なるといったトラブルも。
🔧 解体・再施工が必要になると、工期に大きな影響を及ぼします。
手戻りを防ぐための5つの対策
✅ 1. 企画・設計段階での要件整理
社内での仕様・運用条件・生産計画を事前にしっかり整理し、設計者と共有することが最重要。
この段階でCM会社が関与すれば、矛盾点やリスクを事前に洗い出しできます。
✅ 2. 設計・設備間の連携を強化
設計者と生産設備ベンダーが初期段階から綿密に打合せを行うことで、寸法や設置条件の不一致を防止できます。
※CM会社が調整役となるとスムーズです。
✅ 3. 地盤調査・環境調査の徹底
早い段階でSDS(標準貫入試験)やボーリング調査を行い、構造設計に必要な情報を確定します。
想定外の地盤対応が発生するリスクを低減できます。
✅ 4. 各種申請フローの事前確認
開発許可、建築確認、消防法、危険物規制など、建設予定地に関する法的条件を整理し、スケジュールを事前に組むことで手戻りを防げます。
✅ 5. 図面チェックと現場監理の徹底
施工前に設計図と施工図の整合性をCMが第三者としてチェックすることで、見落としを防止。現場でも適切な施工監理を通じてミスを早期に是正します。
CM方式で「後戻りゼロ」の建設を
工場建設での手戻りは、発注者側では見えにくい初期段階の計画ミスや情報不足が原因で起こることが多いです。
そのため、CM会社を活用して設計者・施工者・設備業者間の全体調整・進行管理・図面整合確認を一貫して行うことが、最も効果的なリスクヘッジとなります。