
製薬工場を建設する際、空調・換気設備は単なる快適性を超えて、製品品質や法令遵守(GMP対応)に直結する重要なインフラです。特に「クリーンルーム」が必要な無菌製剤や注射薬を扱う工場では、空調設計が建設計画全体の成否を左右すると言っても過言ではありません。
本記事では、建設マネジメント(CM方式)の視点から、製薬工場における空調・換気設備設計のポイントをわかりやすく解説します。
1. GMPが求める空調の基本要件とは?
GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)において、空調・換気設備は次のような機能が求められます。
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清浄度の確保(クリーン度:クラス100~10,000)
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圧力差管理(交差汚染の防止)
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温湿度制御(品質の安定)
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換気回数・風速の適正化
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HEPAフィルターなどのろ過装置の設置
これらを満たすためには、初期段階から空調設備の仕様を明確にし、設計・施工・運用の連携が必須です。
2. クリーンルームの設計ポイント
製薬工場で多く用いられるクリーンルームには以下のような設計上の注意点があります。
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ゾーニング(清潔度別の区域分け)
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クラス100、1,000、10,000など用途に応じて設計
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エアロック・エアシャワーの配置
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外部からの微粒子や菌の持ち込みを防止
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圧力勾配の設計
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高清浄区域→低清浄区域へ一方向の空気流を維持
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➡ 設備設計と建築設計を同時進行で進めることが重要です。
3. 換気設計における失敗しがちなポイント
製薬工場における換気設計では、以下のような課題が発生しやすくなります。
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✅ 異なる製造室での交差汚染
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✅ 外気取入れ量不足による室内差圧の乱れ
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✅ 熱負荷設計の見落としによる空調負担の増加
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✅ メンテナンス性を考慮しないフィルター配置
このようなトラブルを防ぐには、CM方式を活用し、建築・設備の双方を統括的に管理することが有効です。
4. 建設マネジメント(CM)の視点からの提案
建設マネジメント会社として、当社では以下のような対応を重視しています。
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📝 基本設計段階で空調ゾーニング・設備容量を明示
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🧑💻 GMPコンサルタントと連携した清浄度管理
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🛠️ 施工段階での機器据付・配管導線の監理
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🔁 試運転・バリデーション対応も見据えた設計指導
空調設計は“後からでは調整が効かない”部分が多いため、初期段階でのCMの関与が極めて重要です。
5. ZEB・省エネ対応の可能性
近年では、製薬工場においてもZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)対応が注目されています。高効率熱源機器やBEMSの導入により、エネルギー消費を抑えながらGMP基準を満たす工場設計が可能になってきました。
CM方式では、これらの補助金活用や省エネ設計の導入支援も一括で対応できるのが強みです。
製薬工場の空調・換気設備は、法令対応・品質管理・省エネと多岐にわたる要件を満たす必要があり、専門的な知見が求められます。建設マネジメント方式(CM方式)を取り入れることで、設計・施工・運用を俯瞰的に統括し、無駄のない高品質な工場建設が可能になります。
GMP対応の製薬工場建設をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。