
設計・衛生・法規制から見る5つのポイント
「食品工場って普通の工場と何が違うの?」
「設備や構造は共通じゃないの?」
そう思う方も多いかもしれませんが、食品工場には一般的な製造工場とは異なる“衛生・安全・環境管理”の基準が求められます。
特に「人が食べるもの」を扱う空間として、衛生管理を建築段階から“仕組み化”する設計が不可欠です。
本記事では、食品工場と一般工場の違いを、設計・構造・運用の観点から比較しながら解説します。
✅ 1. 最も大きな違いは「衛生管理」が建物全体に求められる点
食品工場では、建築そのものが“衛生管理の道具”であると考える必要があります。
項目 | 一般工場 | 食品工場 |
---|---|---|
入退室管理 | ゆるやか(ヘルメット・作業着) | 厳格なゾーン分け+手洗い・エアシャワー必須 |
建物内の空気 | 開放系が多い | 陽圧管理、HEPAフィルターなどで清浄化 |
床・壁・天井材 | 一般的な建材でも可 | 防カビ・洗浄対応・耐薬品性ありの素材使用 |
清掃性 | 専用設計不要 | コーナーR仕上げ、排水勾配設計など必須 |
📌 食品工場は**“洗える工場”**が基本。材料選定や水勾配なども設計時点から考慮されます。
✅ 2. 法規制の違い|食品衛生法・HACCP対応が必須
食品工場は、以下のような衛生関連の法令・制度対応が必須です。
食品衛生法(製造業許可・施設基準)
HACCP(2021年義務化)
ISO22000、FSSC22000 などの民間認証対応
地方自治体の条例(特に給排水・ごみ処理)
一方、一般工場は消防法・建築基準法・労働安全法などが中心であり、「食品衛生法上の構造基準」までは求められないことが多いです。
✅ 3. 動線とゾーニング設計の精度が求められる
食品工場では「交差汚染を防ぐ」ことが極めて重要です。
そのため、以下のようなゾーニング設計が必要になります。
ゾーン | 概要 |
---|---|
清潔区域 | 加工・包装ライン。外部との遮断が必要 |
準清潔区域 | 原料の一次処理など |
汚染区域 | 荷受け・出荷・ごみ置き場など |
また、人・物・空気の動線が交差しないように、**「一方通行動線」や「エリア間のエアロック」**を設ける必要があります。
これは一般工場にはあまり見られない設計特性です。
✅ 4. 使用される設備・素材の違い
項目 | 一般工場 | 食品工場 |
---|---|---|
床仕上げ | モルタル・塗床など | 水洗対応のノンスリップ防滑材、防カビ材など |
壁仕上げ | 石膏ボードやPB | 抗菌パネル、不燃パネル、無目地化が基本 |
排水設備 | 点在型でも可 | スロープ付き床+集約排水+油脂対応トラップ |
設備の配置 | 自由設置可 | 湿気対策+清掃動線考慮したレイアウト設計 |
食品工場では、素材の選定からレイアウトまで清掃性・メンテナンス性が設計の前提です。
✅ 5. 運用段階の維持管理基準が厳しい
建設後の管理体制にも大きな違いがあります。
点検・清掃記録の義務化
モニタリング体制(温湿度・防虫・空調)
衛生教育・マニュアル整備
一般工場では設備点検や法定検査が中心ですが、食品工場は**“清掃や異物混入対策も含めた運用”が常時監査対象**となります。
食品工場は「設計から衛生管理が始まっている」
比較項目 | 一般工場 | 食品工場 |
---|---|---|
法令対応 | 建築・消防中心 | 食品衛生法・HACCP対応が必要 |
動線 | 作業効率重視 | 衛生・交差汚染防止重視 |
材料 | 一般建材 | 抗菌・耐水・防カビ素材中心 |
空調 | 局所換気・自然換気 | 清浄度・陽圧制御あり |
清掃性 | 二次対応可 | 設計段階から想定必須 |
食品工場の建設は、**単なる建物づくりではなく「食品衛生マネジメントのインフラ整備」**とも言えます。
だからこそ、設計段階から専門知識と経験を持つ建設パートナー選びが重要です。