
建設時に知っておくべき構造と基準を徹底解説
「工場の建物にも耐震等級が必要?」
「重い機械があるけど、耐震設計はどう考えるべき?」
こうした疑問を持つ企業担当者の方も少なくありません。
日本は世界有数の地震大国であり、工場建設における耐震性の確保は「安全対策」だけでなく、「事業継続性(BCP)」の観点からも極めて重要です。
本記事では、工場の耐震設計に必要な構造的配慮や法的基準、構造方式の選定ポイントを、建設マネジメントの視点からわかりやすく解説します。
✅ 工場の耐震設計とは?
耐震設計とは、地震の揺れによって建物が倒壊したり、大きな損傷を受けたりしないようにするための構造的な安全性の設計を指します。
工場の場合は、人命保護だけでなく、設備・在庫・製造機能の保全=企業活動の継続が大きな目的となります。
✅ 工場建設で適用される耐震関連の法規
構造形式 | 耐震性 | 特徴 |
---|---|---|
鉄骨造(S造) | △〜◎ | 軽量・柔構造。揺れに追従するが変形しやすい |
鉄筋コンクリート造(RC造) | ◎ | 剛構造で変形に強く、倒壊リスクが低い |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | ◎◎ | RC+Sのハイブリッド。コスト高だが高耐震 |
木造 | △ | 工場用途ではまれ。面積・高さに制限あり |
👉 一般的な製造・物流拠点では鉄骨造(S造)が主流ですが、重機を設置する場合やBCP重視の施設ではRC造も選ばれます。
✅ 工場ならではの耐震設計ポイント
1. 重量機械の基礎設計
NC加工機、プレス機、射出成形機など荷重の大きい設備は独立基礎または免震基礎が必要
地震時に「機械のずれ」「アンカー抜け」などが起きないよう、基礎構造と設備設置図を一体で設計
2. 在庫・棚の転倒対策
高さ1.8m以上のラックはアンカー固定+連結設計+ストッパー設置が基本
重心が上にある荷物にはロープ固定や転倒防止金具も必要
自動倉庫導入時は制震設計と電源喪失時対応の設計も重要
3. 生産ラインの「動線」と「停止時の安全性」
搬送機やAGVラインは揺れによる脱線・衝突リスクに配慮したゾーニングが求められる
地震発生時のライン停止/緊急電源/避難導線を設計に含める
4. 地盤と構造の整合性
軟弱地盤や埋立地では地盤改良・杭基礎・免震構造の採用が推奨
液状化対策や敷地内配管の伸縮対応も併せて検討
✅ 耐震等級は工場に適用される?
住宅と違い、工場には明確な「耐震等級」制度は適用されません。
しかし、次のような民間基準や任意指標が参考にされます:
建築基準法レベル(耐震等級1相当)
BCPを意識した設計(1.25〜1.5倍の耐力設計)
CASBEE(建築環境総合性能評価)による地震対策項目
官公庁・自治体向け工場では「免震構造」の指定があることも
工場の耐震設計は「人命・設備・事業」の三位一体で考える
観点 | 設計の目的 |
---|---|
人命保護 | 倒壊しない構造/避難しやすい導線 |
設備保護 | 重量物・高額設備を守る基礎設計 |
事業継続 | 地震後も稼働可能なBCP対応設計 |
耐震設計は単なる構造の話ではなく、工場全体の運用と事業継続性を守るための重要な判断要素です。