
工場や倉庫の建設計画を立てる際、「食品工場」「物流センター」「製造工場」など、目的によって施設の構造や必要設備が大きく異なります。
しかし、初期段階でその違いを明確に認識しておかないと、設計の手戻りやコスト増加、官庁検査でのトラブルなどにつながりかねません。
この記事では、建設マネジメントの観点から、3つの施設タイプ別の特性・設計ポイント・注意点を詳しく解説します。
1. 食品工場の特性|衛生・温度管理が最優先
食品工場は、HACCP(ハサップ)に対応した高度な衛生環境の確保が最重要課題となります。
主な特性:
クリーンゾーンとダーティゾーンの分離(交差汚染防止)
空調・換気設備のゾーニング(陽圧管理)
結露・カビを防ぐための断熱構造
防虫・防鼠対策(外壁や開口部の仕様に注意)
設計・施工でのポイント:
床・壁・天井材は耐薬品性・清掃性に優れた素材を選定
ステンレス製の機器・配管を多用
給排水処理、グリストラップ(油脂分離槽)の設置
官庁からの食品衛生法に基づく指導が入るため、計画初期から保健所への確認が重要
2. 物流センターの特性|動線とスピードがカギ
物流センター(配送センター・デポなど)は、「保管」よりも効率的な搬出入・流通オペレーションに重きが置かれます。
主な特性:
トラックバースやドックレベラーの配置が重要
WMS(倉庫管理システム)との連携を考慮した設計
高天井・高積載パレットラックへの対応
自動倉庫や搬送ロボット(AGV)導入の可否検討
設計・施工でのポイント:
1階スラブは高耐荷重・フラット仕様(無収縮コンクリートなど)
出入口に風除室・エアカーテンを配置し、温度変化や塵埃の流入を制御
24時間稼働に対応した照明・空調・セキュリティ設備の整備
労働環境の確保(休憩室・更衣室・シャワー設備等)も重要視される傾向
3. 製造工場の特性|業種に応じた設備・インフラが必要
「製造工場」と一口に言っても、自動車部品、電子機器、化学製品など業種により求められるインフラは大きく異なります。
主な特性:
生産ラインレイアウトに応じた自由度の高い設計が必要
電力容量・空気圧・給排水などのユーティリティ容量の確保
防振・防音・防塵といった精密設備への配慮
原材料搬入・製品出荷・工程間移動の動線最適化
設計・施工でのポイント:
天井高さやクレーン対応など、**構造体の選定(鉄骨・RC)**に注意
生産機器の設置位置が早期に決まっている場合、基礎工事との連携が重要
将来的な増築や工程変更に備えたフレキシブルな配管・ダクト設計
火気・高圧ガスなどを使用する場合は、消防法・高圧ガス保安法等の確認が必須
建設マネジメント(CM)会社の役割とは?
上記のように、各施設ごとに要求される仕様・法令・設備条件は大きく異なります。
コンストラクションマネジメント(CM)会社が早期から関与することで、事前のリスク洗い出し・コスト管理・スケジュール調整を行い、スムーズかつ安全な施設建設を実現できます。
目的に応じた「施設タイプの理解」が成功のカギ
施設の種類を正しく理解せずに建設を進めてしまうと、追加工事・設計変更・検査不合格などのリスクが高まります。
「食品を扱うのか」「モノを動かすのか」「製品を生み出すのか」。
その答えによって、設計方針や施工会社の選定、行政手続きの進め方まで変わります。
施設建設をご検討の方は、ぜひCM方式での総合管理をご活用ください。
企画段階からご相談いただくことで、より安全で無駄のない計画が可能になります。