ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)仕様の工場を検討する企業が増えています。
電気料金の高騰や脱炭素の流れを受け、エネルギーコストの削減+環境配慮を両立できる施設として注目されていますが、実際には「予算が思ったよりもかさんだ」という声も少なくありません。
本記事では、ZEB工場を計画する際に予算オーバーを招きやすい5つの落とし穴とその対策を、建築実務の観点から解説します。
ZEB導入の検討段階でぜひ押さえておきたい内容です。

1. ZEB認証基準を満たすための機器選定が後回しになる
ZEB ReadyやNearly ZEBを取得するには、建物の一次エネルギー消費量を大幅に削減する必要があります。
そのためには、高効率な空調設備・照明・換気設備・断熱性能の確保が不可欠ですが、
機器選定が後手に回ると、結果的に高額機器の導入や施工変更が必要になり、コストが膨らむことに。
✅ 対策:設計初期段階からZEBプランナーや機器メーカーと連携し、最適な設備構成を検討
2. 補助金ありきで仕様を決めた結果、全体費用が増加
ZEB関連では、国や地方自治体の補助金制度(例:環境省のZEB補助金、都道府県のZEB Ready補助等)を活用することが多いですが、
補助対象となる仕様やメーカー縛りがある場合、結果的に全体費用が上昇するケースも。
特に、高額な蓄電池・BEMS・断熱材を導入したものの、補助額よりも増加コストが上回ると本末転倒です。
✅ 対策:補助金ありきで判断せず、事業収支に与えるインパクトを事前に試算
3. 断熱・日射遮蔽設計の甘さによる空調負荷増
ZEBの根幹は、「パッシブ設計で建物性能を高め、空調負荷を減らす」こと。
しかし、断熱材の選定やサッシ仕様、庇(ひさし)・日射遮蔽の工夫が足りないと、結果的に高性能空調に頼らざるを得ずコスト増になります。
✅ 対策:パッシブデザインの知見を持つ設計者に依頼し、光・風・断熱をトータルで最適化
4. エネルギーシミュレーションの誤差で性能未達成リスク
ZEB認証には、BEI(Building Energy Index)やエネルギー消費量シミュレーションが必要ですが、
実際の使用パターンとの乖離があると、認証未達成や追加対策費用の発生が生じることがあります。
例:夜間稼働が多い工場で日射遮蔽重視の設計をしても効果が出づらい
✅ 対策:実際の稼働時間・人員・設備運転パターンを想定した現実的なシミュレーションを実施
5. 発電設備(太陽光)の設置量過多による過剰投資
ZEBでは太陽光発電の導入がほぼ必須ですが、「ZEB達成のために発電容量を盛りすぎた」ことで、設置コストが極端に上昇するケースも。
特に、電力自家消費の見込みが少ないのに発電量を増やすと、投資回収が難しくなります。
✅ 対策:需要と供給バランスを見極めた最適発電容量の設計が重要
ZEB工場は“戦略的な計画”でコスト最適化を
ZEB工場は、正しく設計・運用すれば長期的なコスト削減と環境配慮の両立が可能な選択肢です。
しかし、制度や仕様、運用まで含めたトータルな計画がなければ、初期コストが想定以上に膨らむリスクもあります。
今回紹介した5つの盲点を回避し、戦略的にZEB工場を導入することで、コストと環境効果のバランスを最大化できます。
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