新しく工場を建てようと計画している企業にとって、「予算内で完成させられるかどうか」は最大の関心事のひとつです。
しかし、実際には当初の見積もりより費用が膨らんでしまうケースが多く見られます。
本記事では、工場建設において予算オーバーを招きやすい7つの盲点について、実務担当者の視点からわかりやすく解説します。
失敗しないプロジェクト計画のために、事前に押さえておきましょう。
1. 設備要件の後出しで追加工事が発生
工場建設では、製造設備やラインに合わせて給排気・電源・基礎などの仕様が変わります。
しかし、建築計画が進んでから機械仕様が確定すると、それに伴う追加工事が必要になり、当初予算を超えてしまうことがよくあります。
✅ 対策：設備メーカーとの仕様確定を設計初期段階で終わらせる
2. 地盤改良工事の想定漏れ
見積もり時点では、地盤調査をしていないことが多く、軟弱地盤だった場合に改良費用が数百万円～数千万円規模で発生することもあります。
✅ 対策：早期の地盤調査・スウェーデン式試験の実施で想定コストを把握
3. 法規制・用途地域による仕様変更
「工業地域」では自由度が高い反面、「準工業地域」や「市街化調整区域」では建ぺい率・容積率・防火仕様などに制限があり、建築コストが想定以上になることがあります。
✅ 対策：設計者とともに用途地域・建築基準法の確認を早めに行う
4. 外構・造成・排水処理のコストを軽視
建物以外にも、駐車場・通路・フェンス・排水配管・貯水槽などの外構工事が必要です。
特に傾斜地やインフラ未整備地では造成費用が想定以上に膨らむリスクがあります。
✅ 対策：造成計画・外構仕様を敷地選定段階から検討
5. 電力容量不足で高圧受電が必要に
工場で使用する動力機械が多い場合、低圧契約では足りず、高圧受電設備（キュービクル）や変圧器の設置が必要になります。
これにより数百万円〜1,000万円超の追加費用が発生することもあります。
✅ 対策：動力負荷計算を早期に実施し、電力会社と協議を進める
6. 断熱・空調・クリーン仕様の後出し
HACCPやGMP、クリーンルームなどの衛生的要求レベルが途中で上がると、断熱材・空調機器・気密建材などが追加で必要になり、予算が膨らむ要因に。
✅ 対策：必要な清浄度や温湿度条件を事業計画とセットで定義
7. 施工中の設計変更・仕様変更
建設が始まってから「間取りを変えたい」「窓を増やしたい」「天井高を上げたい」などの設計変更が発生すると、施工中断や資材再発注が必要になり、大きな追加費用につながります。
✅ 対策：基本設計の段階で関係者全員の合意を得ておくことが重要
予算オーバーは「建てる前の準備」で防げる
工場建設のコスト増加は、突発的に発生するのではなく、準備段階での情報不足や検討不足が原因であることがほとんどです。
今回紹介した7つの盲点を事前に押さえておけば、想定外の費用増加を防ぎ、安心してプロジェクトを進めることができます。
