冬季の工場建設では、「コンクリートの打設」が最もリスクの高い工程のひとつです。
気温が5℃を下回ると、硬化遅延・凍結・強度不足などのトラブルが発生しやすく、
後工程(鉄骨建方・床施工など)にも大きな影響を及ぼします。
この記事では、建設マネジメントの専門家の視点から、
冬季施工における工場基礎打設の注意点と対策をわかりやすく解説します。

1. 冬季施工に潜むリスクを正しく理解する
冬期(おおむね12月〜2月)は、日中でも気温5℃以下・朝晩は氷点下となる地域が多く、
コンクリート施工には以下のようなリスクが伴います。
| リスク内容 | 発生メカニズム | 結果 |
|---|---|---|
| 凍結による初期硬化不良 | 水分が凍結して化学反応が停止 | 強度低下・ひび割れ |
| 打設後の急激な温度差 | 昼夜の寒暖差が10℃以上 | 表面剥離・クラック発生 |
| 締固め不足 | 冬場はワーカビリティ低下 | 気泡残り・耐久性低下 |
💡 ポイント:
冬季の基礎打設では、「品質よりスピード」ではなく、温度管理と硬化管理を最優先に。
2. 適切な施工条件の設定(外気温5℃以下が基準)
JASS5(日本建築学会規準)では、外気温が5℃以下になる恐れがある場合を「寒中コンクリート」と定義しています。
工場建設では特に、広い基礎面積+厚いスラブが多いため、温度ムラを抑える施工計画が必須です。
■ 施工計画時のチェックポイント
天気予報・最低気温・風速を3日前から確認
打設当日は外気温5℃以上を目安に午前中施工を基本とする
夜間施工を行う場合はシート養生+保温対策を徹底
3. コンクリートの品質管理 ― 配合と温度が命
冬季は硬化反応が遅くなるため、配合と温度管理の工夫が求められます。
🔹 コンクリート配合の工夫
早強セメントの使用:初期強度の発現を早める
単位水量の調整:過剰な水分は凍結リスクを高める
温水練り:生コンプラントで摂氏40〜60℃の温水を使用
🔹 打設温度の管理
打設温度は**10〜20℃**を目標に
運搬距離が長い場合は保温シートでミキサー車を覆う
現場搬入後すぐに温度記録を残す(写真+温度計測)
📋 CM視点アドバイス:
品質記録(温度履歴・試験結果)は、後々の保証・瑕疵リスク回避にも直結します。
4. 打設後の保温・養生対策
打設後の養生は冬季品質管理の“核心”です。
硬化中に表面温度が0℃を下回ると、内部で氷結膨張が起こり、
最終強度が20〜30%低下する恐れがあります。
■ 有効な保温方法
| 方法 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 保温シート養生 | 打設面全体を覆い、熱損失を防止 | 最低3日間は連続養生 |
| 電熱線ヒーター | 鉄筋や型枠に直接巻き付けて加温 | 夜間低温時に有効 |
| テント養生+温風機 | 局部的な加温が可能 | 風対策も同時に行う |
💡 注意点:
コンクリート表面温度を最低でも5℃以上で24時間維持することが目安です。
5. スケジュール管理とリスクヘッジ
冬季の基礎工事では、天候による工期遅延リスクがつきものです。
CM(コンストラクション・マネジメント)では以下のようなスケジュール戦略を取ります。
予備日(雨雪対応)を2〜3日単位で確保
気温上昇日を狙って打設を集中させる「ウィンドウ施工」
外気温が−2℃以下の場合は打設延期を原則とする
締固め・型枠脱型スケジュールは実測温度データに基づき判断
📈 実務Tip:
1日の気温グラフと強度曲線を重ねて見ることで、
「脱型可能時期」を客観的に判断できます。
冬季施工では「計画・温度・記録」の3点が鍵
| 項目 | 対策ポイント |
|---|---|
| 配合設計 | 早強セメント・温水練りで初期強度確保 |
| 打設時期 | 外気温5℃以上・午前中中心 |
| 養生管理 | シート・ヒーター・温風機で保温徹底 |
| 記録管理 | 温度履歴・試験データを保存 |
| スケジュール | 予備日確保+実測に基づく判断 |
冬季の工場基礎打設は、**“温度管理が品質管理”**とも言えます。
安全・品質・工程をバランスさせながら、
凍結や遅延リスクを最小限に抑える施工計画を立てることが重要です。
弊社では、寒冷地や冬季施工の経験を活かし、
温度管理計画・コンクリートVE提案・現場監理支援まで一貫対応しています。
冬季施工のリスクを抑えた工場建設をお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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