工場解体前に確認すべきこと|建設リサイクル法とアスベスト調査

「古い工場を解体したいが、建設リサイクル法の届出が必要なのか分からない」
「アスベスト事前調査と建設リサイクル法の届出は、同じ手続きなのか」
「解体工事の前に、発注者側で何を準備すべきか知りたい」
「届出や調査が遅れると、解体工事の着工に影響するのか不安」

工場の解体工事では、建物を壊す前に複数の手続きや調査が必要になります。なかでも発注者が混同しやすいのが、建設リサイクル法の届出と、アスベスト事前調査です。どちらも解体工事前に確認すべき重要な項目ですが、目的は異なります。

建設リサイクル法は、解体工事で発生するコンクリート、木材、アスファルト・コンクリートなどの建設資材を分別し、再資源化を進めるための制度です。一方、アスベスト事前調査は、解体や改修の際に石綿含有建材が飛散しないよう、工事前に石綿の有無を確認するための調査です。

工場の解体では、屋根材、外壁材、天井材、床材、配管保温材、煙突、ボイラー、ダクト、設備まわりなどにアスベストが含まれている可能性があります。また、工場は建物規模が大きく、基礎、外構、舗装、設備架台、配管なども多いため、分別解体や廃棄物処理の計画も重要です。

建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査を後回しにすると、着工時期の遅れ、追加調査、解体手順の変更、養生・除去工事の追加、廃棄物処理費の増加につながる場合があります。

本記事では、工場の解体工事を検討している発注者向けに、建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査の違い、両者の関係、発注者が確認すべき手順と注意点を解説します。

建設リサイクル法とは

建設リサイクル法とは、正式には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といい、建設工事で発生する特定建設資材を分別し、再資源化を促進するための法律です。

解体工事では、建物をまとめて壊して混合廃棄物として扱うのではなく、コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートなどを分別し、再資源化等を行うことが求められます。

工場解体では、建物本体だけでなく、基礎、土間床、外構舗装、設備基礎、擁壁、トラックヤード、構内道路などから多くの建設資材が発生します。そのため、解体範囲を整理したうえで、分別方法、搬出先、再資源化の方法を確認することが重要です。

大阪府も、対象建設工事では工事着手の7日前までに届出を行い、分別解体等と再資源化等を実施する必要があると案内しています。

建設リサイクル法の届出が必要になる工事

建設リサイクル法では、特定建設資材を用いた建築物等の解体工事などで、一定規模以上の工事が対象になります。工場解体では、建築物の解体工事として床面積の合計が80㎡以上となるケースが多いため、届出対象になる可能性が高いと考えられます。

工事区分建設リサイクル法の主な対象基準
建築物の解体工事床面積の合計80㎡以上
建築物の新築・増築工事一定規模以上の場合に対象
建築物の修繕・模様替等工事一定金額以上の場合に対象
建築物以外の工作物工事一定金額以上の場合に対象

対象建設工事では、発注者または自主施工者が、工事着手の7日前までに都道府県知事等へ届出を行う必要があります。建築物の解体工事では、床面積80㎡以上が主な基準です。

ただし、実際の届出先や提出方法は、建物の所在地によって異なります。大阪市内の工場であれば大阪市、その他の地域であれば大阪府や各自治体の窓口を確認する必要があります。

アスベスト事前調査とは

アスベスト事前調査とは、解体・改修工事を行う前に、工事対象部分の建材に石綿が含まれているかどうかを確認する調査です。

石綿総合情報ポータルサイトでは、解体・改修工事では規模の大小にかかわらず、工事前に解体・改修作業に係る部分のすべての材料について、石綿含有の有無を事前調査する必要があると案内されています。

工場では、屋根の波形スレート、外壁材、天井材、耐火被覆材、床材、配管保温材、煙突、ボイラー、ダクト、設備まわりの耐熱部材などに石綿が含まれている可能性があります。建物本体だけでなく、設備や工作物も調査対象になる場合があるため、解体範囲を明確にしたうえで調査範囲を決める必要があります。

また、建築物の解体・改修工事では、2023年10月1日以降着工の工事から、建築物石綿含有建材調査者などによる事前調査が必要とされています。

建設リサイクル法の届出とアスベスト調査の違い

建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査は、どちらも解体前に関係するため混同されやすいですが、役割は異なります。

項目建設リサイクル法の届出アスベスト事前調査
主な目的分別解体・再資源化の実施石綿含有建材の有無確認・飛散防止
主な対象特定建設資材を用いた一定規模以上の工事解体・改修工事の対象建材
代表的な基準建築物解体80㎡以上など解体・改修工事では事前調査が必要
提出・報告先都道府県知事等、自治体窓口一定規模以上は労働基準監督署・自治体等へ報告
発注者が見るべき点届出期限、分別計画、再資源化先調査範囲、有資格者、分析、除去方法
不足時のリスク届出遅れ、分別計画不足、行政指導飛散リスク、追加除去、工事停止、法令違反リスク

建設リサイクル法の届出は、解体で発生する建設資材をどう分別し、再資源化するかを整理する手続きです。アスベスト事前調査は、石綿含有建材をどう安全に扱うかを確認する調査です。

つまり、建設リサイクル法の届出をしたからといって、アスベスト調査を実施したことにはなりません。逆に、アスベスト調査を行っただけでは、建設リサイクル法の届出をしたことにもなりません。

なぜ両方をセットで考える必要があるのか

制度としては別ですが、工場の解体工事では、建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査をセットで考える必要があります。理由は、アスベストの有無によって、解体手順、分別方法、養生方法、廃棄物処理、工程が変わるためです。

例えば、屋根材や外壁材に石綿が含まれている場合、通常の解体材と混ぜて処理することはできません。先に石綿含有建材を撤去する、湿潤化する、飛散防止の養生を行う、専用の方法で梱包・運搬・処分するなど、通常解体とは異なる手順が必要になります。

また、配管保温材、煙突、ボイラー、ダクトなどに石綿が含まれている場合、建物本体の解体に入る前に、設備撤去や石綿除去の順序を整理する必要があります。これを見落とすと、解体工程を組み直すことになり、工期や費用に影響します。

建設リサイクル法の届出を行う前に、アスベスト事前調査の結果を確認しておくことで、分別解体計画や工程表の精度を高めやすくなります。

発注者が注意すべき手続きの順番

建設リサイクル法の届出は、対象工事では工事着手の7日前までに行う必要があります。しかし、発注者が注意すべきなのは、「7日前に届出すればよい」という単純な話ではありません。

アスベスト事前調査には、書面調査、現地目視調査、必要に応じた分析調査があります。分析が必要になれば結果が出るまで時間がかかります。さらに、石綿含有建材が見つかった場合は、除去方法、養生計画、作業計画、廃棄物処理、各種届出・報告の確認が必要になります。

そのため、工場解体では次のような順番で進めるのが現実的です。まず、解体範囲を整理します。建物本体だけでなく、基礎、外構、設備、煙突、配管、タンク、舗装まで含めるのかを確認します。次に、既存図面、建築確認資料、改修履歴、設備図、過去のアスベスト調査報告書を集めます。図面がない場合は、現地調査で補う必要があります。

そのうえで、アスベスト事前調査を行い、石綿含有建材の有無を確認します。判断できない建材については分析調査を行うか、石綿ありとしてみなし対応するかを検討します。アスベスト調査の結果を踏まえて、解体手順、分別解体計画、廃棄物処理、工程、見積条件を整理します。その後、建設リサイクル法の届出や、必要に応じた石綿事前調査結果報告を行い、着工に進みます。

この順番を逆にすると、届出後に石綿が見つかり、解体方法や工程を見直すことになりやすいため注意が必要です。

アスベスト事前調査結果の報告が必要になる場合

アスベスト事前調査は、解体・改修工事の規模にかかわらず必要になる可能性があります。そのうち、一定規模以上の工事では、事前調査結果の報告が必要になります。

工事区分アスベスト事前調査結果の主な報告対象
建築物の解体工事解体部分の床面積の合計80㎡以上
建築物の改修工事請負金額税込100万円以上
特定の工作物の解体・改修工事請負金額税込100万円以上

石綿事前調査結果報告システムでは、建築物の解体工事で解体部分の床面積の合計が80㎡以上の場合や、建築物改修工事で請負金額が税込100万円以上の場合などが報告対象として示されています。

工場の解体工事では、建築物解体80㎡以上に該当するケースが多いため、建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査結果報告の両方が必要になる可能性があります。

ただし、両者は同じ手続きではありません。提出先、根拠法令、記載内容が異なるため、解体業者任せにせず、発注者側でも何をいつまでに行うのかを確認しておく必要があります。

解体業者・見積で確認すべきこと

工場解体を発注する際、発注者は解体業者に対して、建設リサイクル法とアスベスト対応の両方を確認する必要があります。まず、建設リサイクル法の届出が必要な工事に該当するか、届出書類を誰が作成し、誰が提出するのかを確認します。実務上は解体業者や元請業者が書類作成を支援する場合がありますが、発注者側も届出の有無と期限を把握しておくことが重要です。

次に、アスベスト事前調査を誰が行うのかを確認します。建築物の調査では、有資格者による調査が必要です。工場の場合は、建物本体だけでなく、煙突、配管、ボイラー、ダクト、設備まわりなどの工作物・設備部材も調査対象に含めるか確認する必要があります。

見積では、解体範囲、アスベスト調査費、分析費、石綿除去費、廃棄物処理費、建設リサイクル法の届出対応、仮設費、防じん・防音対策、近隣対応、マニフェスト管理、記録提出の有無を確認します。

特に注意すべきなのは、「アスベスト調査別途」「石綿除去別途」「届出別途」となっている見積です。これらが除外されている場合、後から追加費用が発生する可能性があります。また、解体工事中に想定外の石綿疑義建材や地中障害物が見つかった場合の対応ルールも、契約前に確認しておく必要があります。追加調査、工事停止、再見積、工程変更の扱いが曖昧だと、着工後にトラブルになりやすくなります。

発注者が準備すべき資料

発注者側で事前に資料を準備しておくと、建設リサイクル法の届出やアスベスト事前調査が進めやすくなります。工場解体では、配置図、平面図、立面図、断面図、竣工図、建築確認資料、増改築履歴、改修履歴、設備図、消防設備資料、過去のアスベスト調査報告書などをできるだけ集めておくことが重要です。

特に古い工場では、屋根や外壁の改修、設備更新、配管更新、煙突撤去、ボイラー更新などを過去に行っていることがあります。これらの履歴が分かると、アスベスト調査範囲や解体範囲を整理しやすくなります。

また、残置物、薬品、油、廃液、タンク、地下ピット、埋設配管、地中障害物の有無も確認しておく必要があります。これらは建設リサイクル法やアスベストとは別の問題ですが、解体工事費や工程に大きく影響する場合があります。

発注者が確認すべきチェックリスト

工場の解体工事を計画する際、発注者は以下の項目を確認しておくと、手続き漏れや追加費用を防ぎやすくなります。

確認項目チェック内容
解体規模建築物解体80㎡以上に該当するか
届出期限建設リサイクル法の届出を着工7日前までに行えるか
届出者・提出先発注者、自主施工者、代理提出、自治体窓口を確認したか
分別解体計画コンクリート、木材、アスファルト等の分別方法を確認したか
アスベスト調査有資格者による事前調査を実施するか
調査範囲建物本体だけでなく設備・工作物を含めて確認するか
分析調査不明建材の分析費・期間を見込んでいるか
石綿報告事前調査結果報告の対象に該当するか
石綿除去除去方法、養生、処分、工程を確認したか
見積範囲届出、調査、除去、処分が見積に含まれているか
追加発見時想定外の石綿疑義建材や地中障害物の扱いを決めたか
記録管理届出控え、調査報告書、マニフェストを保管するか

このチェックリストは、工場解体だけでなく、倉庫、研究施設、事務所併設工場、設備撤去を伴う工場改修にも活用できます。

CM方式を活用した解体前手続きの進め方

工場の解体工事では、建設リサイクル法、アスベスト、廃棄物処理、近隣対応、残置物撤去、土壌汚染、地下埋設物など、多くの確認事項があります。発注者だけで全体を管理すると、届出漏れや調査不足が起きる可能性があります。

CM方式を活用することで、発注者の立場から、解体範囲、届出、アスベスト調査、見積比較、工程管理、廃棄物処理記録を整理しやすくなります。

具体的には、建物・外構・設備・工作物の解体範囲を整理し、建設リサイクル法の届出対象や提出期限を確認します。また、アスベスト調査の範囲、有資格者の確認、分析調査の要否、石綿が見つかった場合の除去方法や工程影響を整理します。

さらに、複数の解体業者から見積を取る場合、届出対応、アスベスト調査、除去費、処分費、仮設費、近隣対応、マニフェスト管理が含まれているかを比較することで、金額だけでは見えない差を確認しやすくなります。

CM会社は、法令適合、行政判断、石綿の有無、廃棄物処理の適法性を保証する立場ではありません。しかし、発注者側の視点で必要な確認項目を整理し、専門業者や行政窓口との調整を支援することで、解体前の手続き漏れや工程遅延を抑えやすくなります。

建設リサイクル法の届出とアスベスト調査は別々に管理する

工場の解体工事では、建設リサイクル法の届出とアスベスト事前調査の両方が関係する場合があります。建設リサイクル法は、特定建設資材を分別し、再資源化を進めるための制度です。建築物の解体工事では、床面積80㎡以上の場合、工事着手の7日前までに届出が必要になります。

一方、アスベスト事前調査は、石綿含有建材の有無を確認し、飛散防止や適切な除去・処分を行うための調査です。解体・改修工事では、規模の大小にかかわらず事前調査が必要になり、一定規模以上の工事では事前調査結果の報告対象になります。

両者は、どちらも解体前に必要になる可能性がありますが、目的、提出先、根拠法令、確認内容が異なります。建設リサイクル法の届出をしただけでは、アスベスト調査を行ったことにはなりません。反対に、アスベスト調査を行っても、建設リサイクル法の届出が不要になるわけではありません。

特に工場では、屋根材、外壁材、天井材、床材、配管保温材、煙突、ボイラー、ダクトなどに石綿含有建材が残っている可能性があります。アスベスト調査が遅れると、解体手順、分別計画、廃棄物処理、工程、費用に影響する場合があります。

発注者は、解体計画の初期段階で、建設リサイクル法の届出、アスベスト事前調査、石綿事前調査結果報告、分別解体計画、廃棄物処理記録を別々に管理しながら、全体工程に組み込むことが重要です。

【重要事項】

本記事は、工場の解体工事における建設リサイクル法の届出、アスベスト事前調査、分別解体、廃棄物処理に関する一般的な考え方を整理したものであり、特定案件の法令適合、届出要否、石綿含有建材の有無、行政判断、解体費用、工期、廃棄物処理の適法性を保証するものではありません。建設リサイクル法、大気汚染防止法、石綿障害予防規則、廃棄物処理法、自治体条例等の適用は、建物所在地、用途、規模、構造、解体範囲、工作物の有無、請負金額、施工体制、自治体・労働基準監督署の運用によって異なります。個別案件については、解体業者、有資格の石綿含有建材調査者、設計者、施工者、CM会社、所管行政庁、労働基準監督署、都道府県等の行政窓口および専門家へご確認ください。

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