2021年6月、日本でHACCP(ハサップ)法制化が完全施行されて以来、
食品工場の建設・改修において「HACCP対応設計」が必須条件となりました。
しかし、実際の建築現場では「どこまでHACCP対応が必要なのか」「建築設計で何を変えるべきか」
という質問が今も多く寄せられています。
本記事では、建設マネジメント(CM)会社の専門家の視点から、
HACCP法制化に伴う食品工場の建築基準・設計ポイント・実務での注意点をわかりやすく解説します。

HACCP法制化の背景と目的
HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害要因分析・重要管理点方式)」の略で、
食品の製造工程に潜むリスク(微生物汚染・異物混入・交差汚染など)を
科学的根拠に基づいて予防的に管理する手法です。
法制化以降、すべての食品関連事業者は
「一般衛生管理(GMP)」+「HACCPに基づく工程管理」を行うことが義務化され、
建築段階から衛生・動線・設備に対する要求が大きく変わりました。
HACCP対応工場建設で押さえるべき4つの設計ポイント
1️⃣ 衛生ゾーニングの明確化
最も重要なのは、「汚染を持ち込まない」ゾーニング設計です。
工場内を用途と清潔度で区分し、交差汚染を防ぐことが求められます。
| ゾーン区分 | 主な用途 | 設計ポイント |
|---|---|---|
| クリーンゾーン | 調理・包装・検査 | HEPAフィルター付換気、抗菌内装材 |
| セミクリーンゾーン | 原料準備・仕分け | 温湿度管理+エアカーテン |
| 汚染リスクゾーン | 原材料搬入・廃棄物搬出 | 専用搬入口+排水分離設計 |
🔹ゾーン間にはエアシャワー・手洗い・長靴消毒槽を配置し、
作業者動線と物の流れを完全に分離することが理想です。
2️⃣ 建材と設備の選定:清掃性・耐久性・防水性が鍵
HACCP対応工場では、日常清掃と衛生維持が容易な建材を選定することが必須です。
床材:ノンスリップ仕上げの耐薬品・耐熱仕様(エポキシ・Uクリート系など)
壁・天井:平滑で継ぎ目が少なく、防カビ塗装や樹脂パネル仕上げ
ドア・サッシ:防虫パッキン付き、ステンレス・アルミ製を推奨
温度管理設備:ゾーン別空調+負圧制御で汚染拡散を防止
📋 CM視点メモ:
設計段階で「清掃時間・清掃頻度」を前提にした内装仕様を決めることで、
運用段階の人件費・衛生コストを大幅に削減できます。
3️⃣ 排水・換気システムの衛生設計
食品工場では、水の流れが汚染のリスクを高める最大要因です。
排水と換気は「空気と水が交差しない」構造が鉄則です。
排水設計:
→ クリーンゾーンの水が汚染ゾーンに逆流しないよう、勾配とトラップ設計を徹底。
→ グレーチング下部の清掃口・防臭機構を設ける。換気設計:
→ HEPAフィルターを採用し、クリーンゾーンの空気圧を常に陽圧に保つ。
→ 汚染ゾーンでは負圧制御を行い、臭気や菌の拡散を防止。
💡 ポイント:
「空気・水・人」の流れを同時に可視化し、動線図で検証することが必須です。
4️⃣ トレーサビリティとデジタル管理
HACCP法制化では、製造工程の記録と証跡(トレーサビリティ)が義務づけられています。
そのため、工場建設時からITインフラ・センサー・クラウド環境を整備しておくことが理想です。
IoTセンサーによる温度・湿度・CO₂濃度の自動記録
入退室履歴・洗浄記録のデジタル管理
設備点検や異常検知をBIM・デジタルツインで統合管理
📈 効果:
データに基づくHACCP運用は、監査対応を容易にし、顧客信頼の向上につながります。
工場建設時の実務上の注意点
1️⃣ 自治体ごとの条例・許可手続きに注意
食品衛生法だけでなく、各自治体の保健所・消防署による立入検査基準が異なります。
計画初期段階で行政協議を行うことが成功の鍵。
2️⃣ 生産品目・工程ごとの設計調整
肉・乳製品・惣菜など、扱う食品によって要求基準が変わります。
同じ「HACCP対応」といっても、汚染リスクのレベルが異なるため要設計調整。
3️⃣ 従業員動線と更衣・手洗いエリアの設計
作業者が「汚染源にならない」ための動線設計も不可欠。
入室ルートに手洗い・長靴洗浄・エアシャワー・着替えを順に配置する構成が理想です。
HACCP対応は“建築段階からの衛生マネジメント”
| 観点 | 重要ポイント |
|---|---|
| 設計 | ゾーニング・空調・排水の三位一体設計 |
| 内装 | 抗菌・防水・清掃性に優れた建材選定 |
| 動線 | 人とモノの流れを完全分離 |
| デジタル | トレーサビリティ・監査対応の自動化 |
| CM会社の役割 | 設計〜施工〜運用まで一貫して衛生基準を管理 |
HACCP対応工場建設は、単なる「食品工場の衛生強化」ではなく、
経営リスクを減らし、ブランド信頼を高めるための投資です。
弊社では、HACCP法制化基準に基づいたゾーニング設計・VE提案・行政協議対応・運用支援まで、
トータルでサポートしております。
食品工場の新設・リノベーションを検討中の企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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