「古い工場を改修したいが、アスベスト調査は必要なのか」
「一部の壁や天井を撤去するだけでも、事前調査が必要なのか」
「解体工事では、どのタイミングでアスベスト調査を行うべきか」
「調査費や除去費は、見積に含めておくべきなのか」
「特定粉じん排出等作業の届出は、誰が行うのか」
築年数の古い工場を改修・解体する場合、アスベスト調査は非常に重要な確認項目です。
アスベストは、かつて耐火性、断熱性、防音性、耐久性に優れた建材として、工場、倉庫、事務所、機械室、ボイラー室、屋根、外壁、天井、床材、配管まわりなどに使われてきました。しかし、飛散したアスベストを吸い込むと健康被害につながるおそれがあるため、現在では法令に基づき、解体・改修工事の前に事前調査を行い、必要な飛散防止措置を講じることが求められています。
特に工場の場合、建物本体だけでなく、配管、ダクト、設備基礎、機械室、受変電設備まわり、断熱材、耐火被覆材、炉設備、電気設備、貯蔵設備など、一般的な事務所ビルとは異なる場所にアスベスト含有建材や石綿含有材料が使われていることがあります。
アスベスト調査を後回しにすると、着工直前や工事中にアスベスト含有建材が見つかり、工期の遅れ、追加費用、届出対応、工法変更、操業停止期間の延長につながる可能性があります。
また、アスベスト対応では、事前調査結果の報告、特定粉じん排出等作業の届出、発注者への説明、作業記録の保存など、複数の手続きが関係します。特に、レベル1・レベル2建材の除去を伴う特定粉じん排出等作業の実施届出は、発注者または自主施工者が、作業開始の14日前までに自治体へ行う手続きです。事前調査結果の報告とは提出主体が異なるため、発注者は混同しないよう注意が必要です。
本記事では、工場の改修・解体前にアスベスト調査が必要になる場面、発注者が確認すべきポイント、届出・報告の違い、工期・費用への影響、CM方式での進め方を解説します。

アスベストとは何か
アスベストとは、天然に産出する繊維状の鉱物です。石綿とも呼ばれます。かつては、耐火性、断熱性、防音性、耐摩耗性に優れていたことから、建築材料や設備材料として広く使用されていました。工場では、火気を使うエリア、機械室、ボイラー室、配管まわり、屋根材、外壁材、天井材、床材、耐火被覆材などに使われていた可能性があります。
一方で、アスベストの繊維は非常に細かく、飛散した繊維を吸い込むと健康被害につながるおそれがあります。そのため、現在ではアスベストを含む建材を扱う工事について、事前調査、報告、届出、作業基準、飛散防止措置、作業記録などが定められています。
工場の改修・解体では、建物を壊す前、壁や天井を撤去する前、設備を移設する前に、アスベスト含有建材がないかを確認することが重要です。
工場のアスベスト調査はいつ必要か
工場のアスベスト調査は、原則として、建築物や工作物の解体・改修工事を行う前に必要です。ここで重要なのは、「大規模な解体工事だけが対象ではない」という点です。壁の撤去、天井の張替え、床材の撤去、外壁改修、屋根改修、配管更新、設備更新、ダクト工事、機械基礎の撤去など、既存建材を壊す、削る、切断する、穴を開ける、撤去する工事では、アスベストの事前調査が必要になる場合があります。
特に次のような工事では、事前調査を前提に計画する必要があります。
| 工事内容 | アスベスト調査が必要になりやすい理由 |
|---|---|
| 工場の解体 | 建物全体にアスベスト含有建材が残っている可能性があるため |
| 内装解体 | 天井材、壁材、床材、下地材に含有の可能性があるため |
| 屋根改修 | スレート屋根などにアスベスト含有建材が使われている可能性があるため |
| 外壁改修 | 外壁材、仕上塗材、下地材に含有の可能性があるため |
| 配管更新 | 保温材、断熱材、パッキン類に含有の可能性があるため |
| 機械室改修 | 断熱材、耐火被覆材、ダクトまわりに含有の可能性があるため |
| 設備基礎撤去 | 既存建材や周辺仕上げ材を破壊する可能性があるため |
| 受変電設備まわりの改修 | 壁、天井、床、ケーブル貫通部などを触る可能性があるため |
| 炉設備・電気設備・貯蔵設備の改修 | 工作物として有資格者調査が関係する場合があるため |
| 原状回復工事 | 小規模でも既存仕上げ材を撤去する場合があるため |
工場では、「一部改修だから大丈夫」「古い建材を少し剥がすだけだから問題ない」と判断しないことが重要です。工事の規模だけでなく、既存建材や工作物に手を加えるかどうかを基準に確認する必要があります。
事前調査・事前調査結果報告・届出は分けて考える
アスベスト対応で発注者が混同しやすいのが、「事前調査」「事前調査結果の報告」「特定粉じん排出等作業の届出」です。
建築物等の解体・改修工事では、アスベスト含有建材の有無を確認する事前調査が必要です。一方で、すべての工事で行政への事前調査結果報告が必要になるわけではありません。一定規模以上の工事では、事前調査結果を電子システムなどで報告する必要があります。
さらに、レベル1・レベル2建材の除去を伴う場合には、大気汚染防止法に基づく特定粉じん排出等作業の実施届出が必要になる場合があります。この届出は、発注者または自主施工者が作業開始の14日前までに自治体へ行います。
| 区分 | 内容 | 主な提出・対応主体 |
|---|---|---|
| 事前調査 | 解体・改修工事の前に、アスベスト含有建材の有無を調べること | 元請業者・事業者等 |
| 事前調査結果の報告 | 一定規模以上の工事で、調査結果を電子システム等により報告すること | 元請業者または自主施工者 |
| 特定粉じん排出等作業の実施届出 | レベル1・2建材の除去を伴う場合に、作業開始14日前までに自治体へ行う届出 | 発注者または自主施工者 |
| 作業基準 | アスベスト飛散防止や作業者のばく露防止のために守るべき施工上の基準 | 元請業者・施工者等 |
| 記録保存 | 事前調査結果や説明書面などを一定期間保存すること | 元請業者・発注者等 |
発注者としては、「報告対象ではないから調査不要」と考えないことが重要です。報告対象外の小規模工事でも、既存建材に手を加える場合は、事前調査が必要になることがあります。
また、事前調査結果の報告を元請業者が行う場合でも、特定粉じん排出等作業の実施届出は発注者が行う手続きになることがあります。発注者は、見積段階で「どの手続きを、誰が、いつまでに行うのか」を確認しておく必要があります。
一定規模以上の工事では事前調査結果の報告が必要
解体・改修工事が一定規模以上になる場合、事前調査結果の報告が必要になります。代表的な目安は以下の通りです。
| 工事の種類 | 報告対象となる主な目安 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体部分の延べ床面積が80㎡以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負金額が税込100万円以上 |
| 特定の工作物の解体・改修工事 | 請負金額が税込100万円以上 |
| 一定の船舶の解体・改修工事 | 対象となる場合がある |
改修工事の100万円基準は、材料費を含む作業全体の請負代金で判断し、消費税を含みます。一方、事前調査の費用は、この請負金額の判定には含まれません。
工場では、建築物本体だけでなく、煙突、ボイラー、配管、タンク、焼却設備、ダクト、機械設備まわりなど、工作物に該当する部分が関係する場合があります。そのため、建物の解体面積だけで判断せず、工事内容、請負金額、対象設備を整理したうえで、報告要否を確認することが重要です。
また、事前調査結果の報告は、元請事業者などが行うことになりますが、発注者も無関係ではありません。見積段階で調査費用が計上されているか、報告対象の工事か、報告スケジュールが工程に反映されているかを確認する必要があります。
レベル1・2建材の除去では発注者の届出が必要になる
アスベスト含有建材の中でも、吹付け石綿などのレベル1建材、石綿含有保温材・耐火被覆材・断熱材などのレベル2建材は、飛散リスクが高い建材として扱われます。
これらの建材の除去を伴う場合、大気汚染防止法に基づく特定粉じん排出等作業の実施届出が必要になることがあります。この届出は、発注者または自主施工者が、作業開始の14日前までに自治体へ行う手続きです。
| 対象になりやすい建材 | 主な例 | 届出の考え方 |
|---|---|---|
| レベル1建材 | 吹付け石綿、石綿含有吹付け材 | 特定粉じん排出等作業の実施届出が必要になる |
| レベル2建材 | 石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材 | 特定粉じん排出等作業の実施届出が必要になる |
| レベル3建材 | スレート、成形板、ビニル床タイル等 | 届出対象外でも事前調査・作業基準の確認が必要 |
ここで重要なのは、事前調査結果の報告と、特定粉じん排出等作業の実施届出は別の手続きであるという点です。事前調査結果の報告は、一定規模以上の工事について元請業者または自主施工者が行います。一方、レベル1・2建材の除去を伴う特定粉じん排出等作業の実施届出は、発注者または自主施工者が行います。
発注者は、施工会社に任せきりにするのではなく、「届出対象の建材があるか」「届出が必要な場合、発注者としていつまでに何を提出する必要があるか」「届出に必要な資料を誰が作成するか」を確認しておく必要があります。
発注者にも求められる対応がある
アスベスト対応では、専門調査や除去作業は調査会社・施工会社が行うことが多いものの、発注者にも確認すべき対応があります。
発注者が確認すべき主な事項は以下の通りです。
| 発注者が確認すべきこと | 内容 |
|---|---|
| 事前調査への協力 | 元請業者が行う事前調査に必要な図面、過去の改修履歴、建物情報を提供する |
| 適正な契約条件 | アスベスト飛散防止対策を実施できる工期・費用を確保する |
| 法令遵守を妨げない条件 | 極端に短い工期や不十分な費用で発注しない |
| 特定粉じん排出等作業の届出 | レベル1・2建材の除去を伴う場合、発注者として届出要否を確認する |
| 書面の保存 | 元請業者から受けた事前調査結果の説明書面などを保存する |
| 追加費用への備え | アスベストが見つかった場合の除去費、養生費、工期延長を想定する |
発注者がアスベスト調査に協力しない、必要な費用や工期を見込まない、届出主体を確認しないまま工事を進めると、契約後の追加費用や工程遅延につながる可能性があります。
特に、工場の改修・解体では、操業停止期間や設備更新スケジュールが限られていることがあります。発注者は、事前調査と届出・報告の工程を早めに確認し、無理のない発注条件を整えることが重要です。
有資格者による事前調査が必要
建築物の解体・改修工事では、原則として、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が必要です。アスベストの有無は、目視だけで簡単に判断できるとは限りません。建材の種類、施工時期、メーカー情報、図面、過去の改修履歴、現地状況を確認し、必要に応じて分析を行う必要があります。
また、2026年1月1日以降に着工する工事では、一定の工作物についても有資格者による事前調査が必要です。工場では、炉設備、電気設備、配管、貯蔵設備、発電設備、焼却設備などが関係する場合があります。これらは建築物とは構造や使用材料が異なるため、工作物石綿事前調査者など、対象に応じた調査者へ確認することが重要です。
発注者は、施工会社や調査会社に対して、次の点を確認しておくと安全です。
調査を行う人が有資格者か
建築物石綿含有建材調査者などの資格を持っているか
工作物が対象になる場合、工作物石綿事前調査者などが関与するか
書面調査だけでなく、現地調査を行うか
必要に応じて建材分析を行うか
調査報告書を提出してもらえるか
調査結果を発注者へ説明してもらえるか
報告対象工事の場合、電子システムでの報告に対応できるか
「施工会社が大丈夫と言っているから問題ない」と判断するのではなく、誰が、どの範囲を、どの方法で調査するのかを確認することが重要です。
工場でアスベストが見つかりやすい場所
工場では、一般的な事務所や店舗とは異なる場所にアスベスト含有建材が使われていることがあります。特に注意したい場所は以下の通りです。
| 場所・部位 | 確認すべき建材・設備 |
|---|---|
| 屋根 | スレート屋根、折板屋根の裏打ち材、軒裏材 |
| 外壁 | スレート板、サイディング、仕上塗材、下地材 |
| 天井 | 天井板、吸音板、吹付け材 |
| 壁 | 内装ボード、間仕切り材、耐火間仕切り |
| 床 | ビニル床タイル、長尺シート、接着剤 |
| 鉄骨まわり | 吹付け耐火被覆材 |
| 配管まわり | 保温材、断熱材、パッキン、フランジ材 |
| ボイラー室 | 断熱材、保温材、耐火材 |
| 機械室 | ダクト、配管、天井、壁、断熱材 |
| 煙突 | 断熱材、ライニング材 |
| 受変電設備室 | 壁、天井、床、貫通部まわり |
| 炉設備・電気設備 | 工作物として調査者資格の確認が必要な場合がある |
| 貯蔵設備・配管 | 工作物として調査者資格の確認が必要な場合がある |
| 古い事務所部分 | 天井材、床材、間仕切り、仕上塗材 |
工場では、過去に何度も設備更新や増改築を行っていることがあります。そのため、竣工時の図面だけでは現状を把握できない場合があります。
特に、古い建物に新しい設備を追加している場合、天井裏、壁内部、配管ルート、機械基礎まわりに古い建材が残っていることがあります。改修範囲だけでなく、工事の影響範囲を含めて調査範囲を設定することが重要です。
アスベスト調査の基本的な流れ
工場のアスベスト調査は、一般的に次のような流れで進めます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 工事範囲の整理 | 解体・改修する範囲、撤去する建材、設備工事の範囲を整理する |
| 2. 図面・資料確認 | 竣工図、改修履歴、仕上表、建材情報を確認する |
| 3. 現地調査 | 対象部位を目視確認し、建材の種類や状態を確認する |
| 4. 建材の特定 | アスベスト含有の可能性がある建材を整理する |
| 5. 分析要否の判断 | 目視や資料で判断できない場合、サンプル採取・分析を検討する |
| 6. 調査結果の整理 | 含有・非含有・みなし含有などを整理する |
| 7. 報告要否の確認 | 一定規模以上の工事か、報告対象かを確認する |
| 8. 届出要否の確認 | レベル1・2建材の除去を伴うか、発注者届出が必要かを確認する |
| 9. 工事計画への反映 | 除去方法、隔離、養生、工期、費用を工程に反映する |
| 10. 発注者への説明 | 調査結果、リスク、追加費用、届出要否を共有する |
| 11. 工事着手 | 必要な手続き・飛散防止措置を行ったうえで着工する |
アスベスト調査は、工事の直前ではなく、基本計画や概算見積の段階で始めることが望ましいです。調査結果によっては、工法、工程、予算、発注範囲が変わるためです。
解体工事で注意すべきポイント
工場を解体する場合、アスベスト調査は解体計画の初期段階で行う必要があります。解体工事では、建物全体を撤去するため、屋根、外壁、天井、壁、床、鉄骨、配管、設備機械、煙突、機械室など、調査範囲が広くなります。
発注者が確認すべきポイントは以下の通りです。
解体範囲全体を対象に調査しているか
建物だけでなく、付属建屋や工作物も確認しているか
煙突、ボイラー、配管、ダクト、機械室を確認しているか
過去の増築・改修部分を区別して調査しているか
調査結果が解体見積に反映されているか
除去工事が必要な場合、工程に反映されているか
事前調査結果の報告が必要か確認しているか
特定粉じん排出等作業の実施届出が必要か確認しているか
近隣対策や飛散防止措置が計画されているか
アスベストが見つかった場合、通常の解体工事とは別に、除去作業、隔離養生、負圧集じん、作業記録、廃棄物処理などが必要になることがあります。そのため、解体見積を比較する際は、アスベスト調査・除去費用が含まれているかを確認することが重要です。
改修工事で注意すべきポイント
工場の改修工事では、「建物を全部壊さないからアスベスト調査は不要」と考えないことが重要です。壁の一部撤去、天井の開口、床材の撤去、配管更新、ダクト更新、設備搬入のための開口工事、外壁補修、屋根補修などでも、既存建材に手を加える場合は事前調査が必要になることがあります。
改修工事では、次の点を確認しておく必要があります。
工事で撤去・切断・穿孔する建材は何か
天井裏や壁内部に古い建材が残っていないか
配管保温材やダクトまわりを触るか
床材や接着剤を撤去するか
外壁や屋根材を削る、切る、剥がす作業があるか
設備更新に伴い、壁や床に穴を開けるか
炉設備、電気設備、配管、貯蔵設備など工作物の調査が必要か
工事範囲外の建材に影響しないか
操業中の工場で飛散防止措置をどう行うか
特に操業中の工場では、アスベスト除去が必要になった場合、生産エリアとの区画、作業時間、換気、搬出ルート、従業員動線、近隣対応を含めて計画する必要があります。
小規模工事でも確認が必要な場合がある
アスベスト対応では、「小規模工事だから不要」とは言い切れません。
例えば、次のような工事でも注意が必要です。
エアコン更新に伴う壁の穴あけ
配管貫通部の拡張
照明更新に伴う天井材の撤去
床材の張替え
間仕切り撤去
外壁補修
屋根材の一部補修
古い設備基礎の撤去
原状回復工事
報告対象になるかどうかは工事規模や金額によって異なりますが、既存建材に手を加える以上、事前調査が必要になる場合があります。発注者は、見積依頼時に「この工事ではアスベスト事前調査が必要か」「報告対象になるか」「届出対象になるか」「調査費は見積に含まれているか」を確認しておくことが重要です。
アスベストが見つかった場合の工期への影響
アスベスト含有建材が見つかった場合、工事工程に影響が出ることがあります。特に、除去や飛散防止措置が必要な場合、通常の解体・改修工事とは異なる工程が必要になります。
主な影響は以下の通りです。
| 工期への影響 | 内容 |
|---|---|
| 調査期間 | 資料確認、現地調査、分析に時間がかかる |
| 報告期間 | 一定規模以上の工事では事前調査結果の報告が必要になる |
| 届出期間 | レベル1・2建材の除去では、作業開始14日前までの届出が必要になる |
| 養生期間 | 作業区画の隔離、負圧養生、飛散防止措置が必要になる |
| 除去作業 | 通常撤去よりも時間がかかる |
| 廃棄物処理 | 特別な分別・梱包・処理が必要になる |
| 復旧工事 | 除去後の下地補修や仕上げ復旧が必要になる |
| 操業調整 | 生産停止、夜間工事、休日工事が必要になる場合がある |
工場では、生産スケジュールや設備停止期間に制約があるため、アスベスト対応の遅れが操業計画に影響することがあります。特に、長期休暇中に工事を予定している場合、事前調査や届出確認が遅れると、その期間に工事を実施できない可能性があります。
アスベストが見つかった場合の費用への影響
アスベスト含有建材が見つかった場合、通常の解体・改修費用に加えて、調査費、分析費、届出対応費、除去費、養生費、廃棄物処理費などが発生することがあります。
主な費用項目は以下の通りです。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 事前調査費 | 図面確認、現地調査、調査報告書作成 |
| 分析費 | 建材サンプル採取、分析機関での含有分析 |
| 報告対応費 | 事前調査結果報告システムへの対応 |
| 届出対応費 | 特定粉じん排出等作業の実施届出に必要な書類作成等 |
| 養生費 | 作業区画の隔離、負圧養生、飛散防止措置 |
| 除去費 | アスベスト含有建材の除去作業 |
| 測定費 | 作業環境測定、濃度測定が必要な場合 |
| 廃棄物処理費 | 分別、梱包、運搬、処分 |
| 工程調整費 | 夜間工事、休日工事、仮設、段階施工 |
見積比較では、単に総額だけを見るのではなく、アスベスト調査費、分析費、除去費、報告・届出対応費が含まれているかを確認することが重要です。
極端に安い見積では、アスベスト調査費が含まれていない、除去費が別途になっている、調査範囲が限定されている可能性があります。
発注者が見積段階で確認すべきこと
発注者は、見積段階でアスベスト対応の有無を確認しておく必要があります。
確認すべき項目は以下の通りです。
アスベスト事前調査費が見積に含まれているか
調査範囲は工事範囲と一致しているか
調査者の資格を確認しているか
工作物石綿事前調査者などが必要な工事か
分析費は含まれているか
事前調査結果の報告対象工事かどうか確認しているか
特定粉じん排出等作業の実施届出が必要か
届出が必要な場合、発注者として何を行う必要があるか
アスベストが見つかった場合の追加費用の扱い
除去工事の単価や条件
工期延長が必要な場合の扱い
操業中工事の場合の安全対策
近隣対応、掲示、作業記録の対応
アスベスト対応は、契約後に追加条件として発生すると、費用や工期のトラブルになりやすい項目です。見積段階で条件を明確にしておくことが重要です。
発注者が施工者へ確認すべきこと
工場の改修・解体を発注する際は、施工者へ次の点を確認しておくと安全です。
この工事ではアスベスト事前調査が必要か
調査対象範囲はどこまでか
建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が調査するか
工作物が対象になる場合、工作物石綿事前調査者などが調査するか
図面調査と現地調査の両方を行うか
分析が必要な建材はあるか
事前調査結果の報告が必要か
事前調査結果の報告は誰が行うか
レベル1・2建材の除去を伴うか
特定粉じん排出等作業の実施届出が必要か
届出が必要な場合、発注者または自主施工者が作業開始14日前までに自治体へ提出する手続きであることを確認したか
届出に必要な資料を誰が作成するか
吹付け材、保温材、耐火被覆材などが見つかった場合の対応はどうするか
工事中の飛散防止措置はどうするか
操業中の従業員や近隣への影響はどう管理するか
アスベスト含有建材の廃棄物処理はどう行うか
調査結果や作業記録を発注者に提出してもらえるか
発注者側で保存すべき書面は何か
発注者は、専門的な判断を自ら行う必要はありません。ただし、調査・報告・届出・除去・廃棄物処理が適切に計画されているかを確認する責任があります。
PCB調査とあわせて確認するとよい
古い工場の改修・解体では、アスベストだけでなく、PCB含有機器の有無も確認する必要があります。PCBは、古いキュービクル、変圧器、コンデンサー、照明安定器などに関係する可能性があります。アスベストが建材に関するリスクであるのに対し、PCBは電気機器や廃棄物管理に関するリスクです。
どちらも、工事中に見つかると工程や費用に大きく影響します。そのため、古い工場を改修・解体する場合は、アスベスト調査とPCB確認を別々に後回しにするのではなく、計画初期にまとめて確認することが重要です。
特に次のような工場では、アスベストとPCBの両方を確認しておくと安全です。
築30年以上の工場
古いキュービクルや変圧器が残っている工場
古いスレート屋根や外壁材がある工場
ボイラー室、機械室、配管保温材が残っている工場
過去の改修履歴が不明な工場
解体後に新築を予定している工場
既存工場を購入・賃借して使う予定の工場
PCB確認の詳細は、「工場の古いキュービクル・変圧器にPCBは残っていないか?2027年3月期限に向けた改修・解体前の確認ポイント」で解説しています。
発注者が確認すべきチェックリスト
工場のアスベスト調査では、以下の項目を確認しておくことが重要です。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 工事内容 | 解体、改修、補修、設備更新のどれに該当するか |
| 工事範囲 | 撤去・切断・穿孔する建材を整理したか |
| 建物の築年数 | アスベスト含有建材が使われた可能性があるか |
| 工作物 | 炉設備、電気設備、配管、貯蔵設備などが対象に含まれるか |
| 図面・資料 | 竣工図、仕上表、改修履歴を確認したか |
| 調査者 | 有資格者が事前調査を行うか |
| 工作物調査者 | 対象工作物について工作物石綿事前調査者等が必要か |
| 現地調査 | 書面だけでなく現地確認を行うか |
| 分析 | 判断できない建材は分析するか |
| 報告要否 | 80㎡以上の解体、税込100万円以上の改修等に該当するか |
| 届出要否 | レベル1・2建材の除去に伴う特定粉じん排出等作業の実施届出が必要か |
| 届出主体 | 発注者または自主施工者が作業開始14日前までに自治体へ届出する必要があるか |
| 発注者協力 | 図面、改修履歴、建物情報を施工者へ提供したか |
| 契約条件 | 飛散防止対策に必要な費用・工期を確保しているか |
| 書面保存 | 発注者として保存すべき事前調査書面を確認したか |
| 見積 | 調査費、分析費、除去費、報告・届出対応費が含まれているか |
| 工期 | 調査・報告・届出・除去期間を工程に反映したか |
| 操業影響 | 生産停止、従業員動線、搬出ルートを確認したか |
| 近隣対応 | 飛散防止、掲示、説明の要否を確認したか |
| 廃棄物処理 | アスベスト含有廃棄物の処理方法を確認したか |
| PCB確認 | 古い電気設備や照明安定器も確認したか |
| 記録 | 調査結果や作業記録を受領・保存できるか |
このチェックリストは、工場の解体、改修、屋根改修、外壁改修、設備更新、原状回復工事、既存工場の購入・賃借時にも活用できます。
工場のアスベスト調査は改修・解体前の初期段階で確認する
工場の改修・解体では、アスベスト調査を早い段階で行うことが重要です。アスベスト調査は、大規模な解体工事だけで必要になるものではありません。壁、天井、床、屋根、外壁、配管、ダクト、機械室、設備基礎など、既存建材に手を加える工事では、事前調査が必要になる場合があります。
特に、建築物の解体工事で解体部分の延べ床面積が80㎡以上の場合や、建築物の改修工事で請負金額が税込100万円以上の場合など、一定規模以上の工事では、事前調査結果の報告が必要になります。
また、レベル1・レベル2建材の除去を伴う場合、特定粉じん排出等作業の実施届出が必要になることがあります。この届出は、発注者または自主施工者が、作業開始の14日前までに自治体へ行う手続きです。事前調査結果の報告とは提出主体が異なるため、発注者は誰が何を行うのかを事前に確認する必要があります。
建築物の解体・改修工事では、原則として建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が必要です。さらに、2026年1月1日以降に着工する一定の工作物については、工作物石綿事前調査者などが関係する場合があります。工場では炉設備、電気設備、配管、貯蔵設備などが該当する可能性があるため、調査者の資格確認も重要です。
アスベストが工事中に見つかると、工期延長、追加費用、操業停止期間の延長、近隣対応、廃棄物処理などに影響します。特に操業中の工場では、従業員動線、生産停止期間、搬出ルート、飛散防止措置を含めて計画することが重要です。
古い工場を改修・解体する場合は、アスベスト調査とあわせて、PCB含有機器、残置物、地中障害、既存設備の状態も確認しておくと、工事中のトラブルを防ぎやすくなります。
発注者は、施工会社任せにするのではなく、見積段階からアスベスト調査費、分析費、除去費、報告・届出対応、工期への影響を確認し、適切な発注条件を整えることが重要です。
【重要事項】
本記事は、工場のアスベスト調査、解体・改修前の事前調査、報告・届出、発注者の確認事項、工期・費用への影響に関する一般的な考え方を整理したものであり、特定案件におけるアスベスト含有の有無、法令適合、調査結果、報告・届出要否、除去方法、廃棄物処理、工期、費用、施工品質、安全性を保証するものではありません。アスベスト調査・報告・届出・除去・廃棄物処理の要否は、建物の用途、築年数、建材の種類、工作物の種類、工事内容、工事規模、請負金額、自治体の運用、関係法令によって異なります。個別案件については、建築物石綿含有建材調査者、工作物石綿事前調査者、専門調査会社、施工者、解体会社、設計者、所管行政庁、労働基準監督署、自治体、CM会社および専門家へご確認ください。
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