クリーンルーム工場でエアハンが重要になる理由|清浄度・差圧・温湿度管理

クリーンルーム工場の建設では、建物の構造や内装、クリーンパネル、床材だけでなく、エアハン(エアハンドリングユニット)を中心とした空調計画が非常に重要です。

クリーンルームは、単に清潔な部屋をつくるだけではありません。空気中の微粒子、温度、湿度、気流、室間差圧、換気、フィルター性能、作業者や製造設備から発生する熱や粉じんまで管理する必要があります。そのため、クリーンルーム工場では、エアハンの能力や設置場所、ダクトルート、フィルター構成、メンテナンス性が、製品品質や稼働後の安定性に大きく影響します。

エアハンドリングユニットは、一般的に送風機、熱交換器、ケーシング、フィルターなどで構成され、外気の取り入れや室内空気の循環、冷却・加熱・除湿・加湿・除じんなどを行う空調設備です。工場では、一般空調だけでなく、クリーンルームや恒温恒湿室の環境管理にも関係します。

また、クリーンルームの清浄度は、空気中の浮遊粒子濃度をもとに分類される考え方が用いられます。ISO 14644-1でも、クリーンルームやクリーンゾーンの空気清浄度を、浮遊粒子濃度に基づいて分類することが示されています。

この記事では、クリーンルーム工場でエアハンが重要になる理由と、発注者が建築計画の段階で確認すべきポイントを解説します。

クリーンルーム工場におけるエアハンの役割

クリーンルーム工場におけるエアハンの役割は、単なる冷暖房ではありません。清浄度を維持し、必要な温湿度を保ち、室間差圧を安定させ、製造エリアに適切な気流を供給するための中核設備です。

一般的な工場空調では、作業者の快適性や換気が主な目的になることが多いですが、クリーンルームでは製品品質や工程管理が空調条件と直結します。たとえば、半導体工場や精密機器工場では、微粒子や温度変化が製品精度に影響することがあります。医薬品工場や医療機器工場では、清浄度、差圧、温湿度、フィルター管理が品質管理上の重要な要素になります。

無菌医薬品製造に関する指針でも、空調システムと管理プログラムの基本要素として、温度、相対湿度、風量、換気回数、一方向気流、室間差圧、HEPAフィルターの完全性、浮遊微粒子数、微生物などが挙げられています。

つまり、クリーンルーム工場では、エアハンを「空調機器」としてだけでなく、品質管理に関わる重要設備として考える必要があります。

1. 清浄度を維持するために重要

クリーンルーム工場でエアハンが重要になる最大の理由は、清浄度の維持に関わるためです。クリーンルームでは、空気中の微粒子を一定レベル以下に抑える必要があります。そのためには、適切なフィルターを通した清浄空気を安定して供給し、室内で発生した粉じんや微粒子を効率よく排出・回収する空気の流れをつくることが重要です。

エアハン計画で確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 必要な清浄度レベル
  • フィルター構成
  • HEPAフィルターの必要性
  • 給気量・還気量
  • 室内の気流方向
  • 発じん源となる設備や作業の有無
  • 人の出入りによる清浄度への影響
  • メンテナンス時の清浄度維持

清浄度を高めようとすると、空調設備の能力、フィルター性能、ダクト計画、天井システム、室内気流が複雑になりやすくなります。一方で、すべてのエリアを過剰に高い清浄度で計画すると、建設費やランニングコストが大きくなります。

そのため、発注者は製造工程ごとに必要な清浄度を整理し、クリーンルーム、準クリーンエリア、一般エリアを適切に分けることが重要です。

2. 差圧管理に影響する

クリーンルーム工場では、清浄度の高い区域に汚染された空気が流入しないよう、室間差圧を管理することがあります。

一般的には、清浄度の高い部屋を陽圧にし、隣接する低清浄度エリアへ空気が流れるように計画します。これにより、外部や低清浄度エリアからの空気が重要な製造エリアに入り込むことを防ぎやすくなります。

ただし、すべての部屋を単純に陽圧にすればよいわけではありません。粉体、薬液、臭気、特殊ガス、危険物などを扱う工程では、封じ込めや局所排気、陰圧管理が必要になる場合もあります。

差圧計画では、以下の点を確認します。

  • どの室を陽圧にするか
  • どの室を陰圧にするか
  • 前室やエアロックの必要性
  • 扉の開閉頻度
  • 給気量と排気量のバランス
  • 差圧計の設置場所
  • 警報設定の有無
  • 停電時や空調停止時の影響

エアハンの風量や給排気バランスが適切でないと、設計上の差圧を維持できない場合があります。差圧は空調設計だけでなく、建築の気密性、扉の仕様、前室の配置、運用ルールとも関係します。

そのため、クリーンルーム工場では、エアハン計画とゾーニング計画を一体で検討する必要があります。

3. 温湿度管理に関係する

クリーンルーム工場では、温湿度管理も重要です。温度や湿度は、製品品質、設備精度、作業環境、微生物リスク、静電気、結露などに影響する場合があります。特に精密機器、半導体、医薬品、医療機器、化粧品、食品などでは、製品や工程によって求められる温湿度条件が異なります。

温湿度管理で確認すべき項目は以下の通りです。

  • 製造工程ごとの温度条件
  • 湿度管理が必要な工程
  • 結露を避けるべきエリア
  • 静電気対策が必要な製品
  • 微生物管理が必要な工程
  • 製造設備の発熱量
  • 作業者数の変動
  • 外気条件の季節変動
  • 24時間運転の有無

温湿度条件を厳しく設定すると、エアハン本体、冷温水設備、加湿・除湿設備、制御システムの仕様が高くなり、建設費や運用コストに影響します。一方で、必要な温湿度条件を満たせない場合、製品品質や歩留まりに影響する可能性があります。

クリーンルーム工場では、製造部門と品質管理部門が連携し、製品品質に必要な温湿度条件を明確にしたうえで、エアハン計画に反映することが大切です。

4. 気流計画とゾーニングに影響する

クリーンルームでは、どこから空気を供給し、どこへ戻すかという気流計画が重要です。給気口や還気口の位置、ダクトルート、室内の設備配置、人の動線、製品の動線によって、気流の乱れや滞留が発生することがあります。気流が適切でないと、清浄度が安定しない、局所的に粉じんが溜まる、差圧が維持しにくいといった問題につながります。

気流計画で確認すべき項目は以下の通りです。

  • 給気口の位置
  • 還気口の位置
  • 室内設備との干渉
  • 作業者の立ち位置
  • 製造ラインの配置
  • 前室・更衣室・搬入室との接続
  • 清浄度の異なるエリアの関係
  • 扉開閉時の空気の流れ

クリーンルーム工場では、空調設備だけで清浄度を維持することはできません。ゾーニング、人・物の動線、室圧、気密性、設備配置を一体で考える必要があります。

エアハンの計画を後回しにすると、建築レイアウトが決まった後にダクトルートや給気口の位置を調整することになり、天井裏スペースや機械室の不足が問題になる場合があります。

5. 生産設備の発熱・排気条件に対応する

クリーンルーム工場では、生産設備の発熱量や排気条件もエアハン計画に大きく影響します。製造装置、検査装置、乾燥機、加熱装置、コンプレッサー、クリーンベンチ、ロボット、搬送設備などは、運転時に熱を発生させることがあります。発熱量を考慮せずに空調計画を進めると、室温が安定せず、製品品質や作業環境に影響する可能性があります。

また、設備から排気、粉じん、臭気、薬品ガス、蒸気などが発生する場合は、エアハンだけでなく、局所排気や排気処理設備を検討する必要があります。

確認すべき項目は以下の通りです。

  • 生産設備の発熱量
  • 排気量
  • 局所排気の必要性
  • 粉じん・臭気・薬品ガスの有無
  • 製造設備の稼働時間
  • 設備増設時の空調余裕
  • 排気量と給気量のバランス
  • 排熱処理の方法

生産設備の条件が決まる前にエアハンを計画すると、後から能力不足やダクトルート変更が発生することがあります。クリーンルーム工場では、建築計画、空調計画、生産設備計画を同時に進めることが重要です。

6. フィルター交換・保守点検がしやすいか

エアハンは、設置して終わりの設備ではありません。フィルター交換、コイル清掃、ファン点検、ドレン清掃、加湿器点検、センサー点検など、定期的なメンテナンスが必要です。

特にクリーンルーム工場では、フィルターの性能や清掃状態が清浄度に影響します。メンテナンススペースが不足していると、フィルター交換や点検作業がしにくくなり、運用後の管理負担が増えます。

発注者が確認すべき項目は以下の通りです。

  • フィルター交換スペース
  • コイル清掃スペース
  • ファン点検スペース
  • ドレンパン清掃スペース
  • 点検口の位置
  • 作業者の安全な通路
  • メンテナンス時の清浄区域への影響
  • 更新時の搬出入ルート

クリーンルームでは、メンテナンス作業そのものが汚染リスクになる場合があります。空調機械室の位置や点検動線を適切に計画し、清浄区域への影響を抑えられるようにすることが重要です。

7. エアハンの設置場所とダクトスペースを確認する

クリーンルーム工場では、エアハン本体の設置場所とダクトスペースの確保が重要です。エアハンは、機械室、屋上、屋外スペースなどに設置されることがあります。どこに設置するかによって、構造荷重、騒音、振動、保守性、ダクトルート、将来更新時の搬出入方法が変わります。

また、クリーンルームでは天井裏にダクト、フィルター、照明、配管、ケーブルラック、スプリンクラーなどが集中しやすくなります。天井裏スペースが不足すると、施工段階で設備同士が干渉し、梁下寸法や天井高さに影響する場合があります。

確認すべき項目は以下の通りです。

  • エアハン本体の設置スペース
  • 機械室の広さ
  • 屋上設置時の構造荷重
  • 搬入経路
  • 将来更新時の搬出入ルート
  • メインダクトのルート
  • 給気・還気・排気ダクトの経路
  • 天井裏スペース
  • 点検口の位置
  • ドレン排水ルート

エアハンとダクトルートは、建物完成後に簡単に変更できるものではありません。初期段階で建築計画に反映しておくことが重要です。

8. 省エネとランニングコストに影響する

クリーンルーム工場では、エアハンの運転時間が長くなりやすく、空調のランニングコストが大きくなる傾向があります。

清浄度や温湿度条件を維持するためには、一定の風量や外気処理が必要になります。しかし、必要以上に高い清浄度や厳しい温湿度条件を設定すると、設備容量が大きくなり、電力使用量も増加します。

省エネの観点では、以下の点を確認することが重要です。

  • 必要な清浄度を工程ごとに分けているか
  • 空調範囲を必要最小限にできるか
  • 風量を適切に設定しているか
  • インバーター制御を採用できるか
  • 外気導入量は適切か
  • 熱回収を検討できるか
  • フィルターの圧損管理を行うか
  • 運転時間を最適化できるか
  • 中央監視やBEMSと連携できるか

クリーンルーム工場では、初期費用だけでなく、稼働後の電気代、フィルター交換費、保守費まで含めて考える必要があります。過剰な仕様を避けながら、品質管理に必要な空調条件を満たすバランスが重要です。

9. モニタリング・記録管理と連動させる

クリーンルーム工場では、温度、湿度、差圧、清浄度、風量、フィルター差圧などを監視・記録する場合があります。

エアハンの運転状態や室内環境を確認できる仕組みがないと、異常発生時に原因を特定しにくくなります。特に医薬品、医療機器、食品、半導体、精密部品などでは、環境記録が品質管理やトレーサビリティに関係する場合があります。

建築計画では、以下の点を確認します。

  • 温湿度センサーの設置位置
  • 差圧計の設置場所
  • 警報表示の位置
  • 中央監視システムとの接続
  • 記録データの保存方法
  • 異常時の通知方法
  • 停電時の対応
  • センサー点検・校正のしやすさ

モニタリング設備は、後から追加することもできますが、配線ルートや設置場所を考慮していないと、施工後の改修が必要になる場合があります。エアハン計画と環境モニタリングは、初期段階から連動して検討することが重要です。

クリーンルーム工場のエアハン計画でよくある失敗

クリーンルーム工場では、エアハン計画に関して次のような失敗が起こりやすいです。1つ目は、清浄度や温湿度条件を十分に整理しないまま、空調設備を計画してしまうケースです。必要条件が曖昧なまま進めると、過大設計や能力不足につながる可能性があります。

2つ目は、生産設備の発熱量や排気条件を考慮していないケースです。設備稼働後に室温が安定しない、排熱が処理できない、差圧が乱れるといった問題が発生することがあります。

3つ目は、機械室やダクトスペースが不足するケースです。建築計画が進んだ後にエアハンやダクトを配置しようとしても、十分なスペースがなく、天井高さや設備配置に影響する場合があります。

4つ目は、メンテナンススペースを確保していないケースです。フィルター交換や点検がしにくい設計では、運用後の保守管理が難しくなります。

5つ目は、将来の更新を考えていないケースです。エアハンを更新する際に搬出入ルートがなく、大掛かりな改修が必要になる場合があります。

これらの失敗を防ぐためには、建築計画の初期段階から、発注者、設計者、空調設備会社、生産設備メーカー、品質管理部門が連携し、条件を整理することが重要です。

発注者が確認すべきチェックリスト

クリーンルーム工場でエアハンを計画する際、発注者は以下の項目を確認しておくと、設計段階での手戻りを減らしやすくなります。

  • 必要な清浄度レベルは整理されているか
  • クリーンルーム化する範囲は明確か
  • 温湿度条件は工程ごとに整理されているか
  • 室間差圧の考え方は決まっているか
  • エアロックや前室の必要性を確認しているか
  • 生産設備の発熱量や排気条件を確認しているか
  • 必要風量や換気回数の考え方は整理されているか
  • フィルター構成や交換スペースは確認しているか
  • エアハンの設置場所は決まっているか
  • 機械室や屋上のスペースは十分か
  • ダクトルートや天井裏スペースは確保できるか
  • メンテナンス動線は確保されているか
  • 温湿度・差圧・清浄度のモニタリング方法は決まっているか
  • 省エネやランニングコストも考慮しているか
  • 将来のエアハン更新時に搬出入できるか

クリーンルーム工場では、エアハン(エアハンドリングユニット)が清浄度、差圧、温湿度管理、気流、換気、フィルター管理に大きく関係します。エアハン計画を後回しにすると、清浄度が安定しない、差圧が維持できない、温湿度が管理できない、ダクトスペースが不足する、メンテナンスがしにくいといった問題につながる可能性があります。

特に、半導体工場、精密工場、医薬品工場、医療機器工場、化粧品工場、食品工場では、空調条件が製品品質や工程管理に直接影響する場合があります。

クリーンルーム工場の建築計画では、エアハン本体だけでなく、清浄度、差圧、温湿度、気流、フィルター、ダクト、機械室、メンテナンス動線、モニタリング設備を一体で検討することが重要です。

発注者は、初期段階から製造部門、品質管理部門、設計者、空調設備会社、生産設備メーカーと情報を共有し、品質管理と運用性の両方に対応できる空調計画を立てることが大切です。

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